★お気楽日記★

アリとキリギリスでは断然キリギリスです。 うさぎとかめなら、確実にうさぎです。 でも跳ねる趣味はありません。

5分で雑にわかる?「リチャード三世」(天保十二年のシェイクスピアにむけて)

あと2週間後の「天保十二年のシェイクスピア」の舞台を楽しみにしているのですが、予習としてシェイクスピアも読んでおこうかな…と図書館からもろもろ借りてきたけど、戯曲を読むのって難しいですね。

(舞台お好きな方が「戯曲を読むにはある程度の観劇経験が必要」とおっしゃっていたけどその通りかも)

ハムレット」「ロミオとジュリエット」「リア王」辺りは基礎知識としてストーリー知っているし、「マクベス」「オセロー」も目を通せば「そうそうこんな感じ」と思い出すのですが、「リチャード三世」はイギリスの薔薇戦争の辺りの知識が無いと「お前はどのヘンリーだ?またエリザベスか?」って混乱して、私には読みづらかったです。

しかし、今回は高橋一生さん演じる佐渡の三世次がこのリチャード三世をモデルにしたキャラクターだし、ストーリーにもたくさんパロディが登場するので、ものすごく雑にわかる「リチャード三世」のお話をまとめてみました。(私は英国史シェイクスピアも演劇も全く詳しくないので間違っているところが多々あるかも)

 

リチャード三世 (角川文庫クラシックス)

リチャード三世 (角川文庫クラシックス)

 

 

(雑なまとめです)

時代は15世紀、イギリスはヨーク家とランカスター家が王位を争って戦争を続けていました。ヨーク家の三兄弟(その三男が主人公のグロスター公リチャード)が、ランカスター家のヘンリー六世や王太子を殺害し、ヨーク家長男がエドワード四世として王位についたという状況で、主人公のリチャードの長い独白で舞台の幕が上がります。(CV:高橋一生でご想像下さい)

「今、不満の冬がようやく去り、ヨーク家の太陽(sunと息子のsonが掛け言葉)エドワードによって栄光の夏が来た」

から始まり、みなが喜んで遊んでいる状況を語りながら、

「だがおれは醜く出来そこないに生まれて、犬にも吠えられる」と自分だけは不具に生まれて楽しむことが出来ないことを嘆きます。長男を太陽に例えながら自分は影法師を相手にするしかないと太陽に対する影の身であることを詩的に表現し

「となれば心を決めたぞ、俺は悪党となって、この世の中のむなしい楽しみを憎んでやる」

と宣言します。

 

この長い独白シーン(ここに挙げたのは一部で、実際は長く詩的な表現が続きます)は舞台の肝で、この掴みが成功するかどうかで舞台の8割の成否が決まると言っている方もいました。

ここでリチャードが観客に向けて心情を告白することで、観客とリチャードの共犯関係が生まれ、その後リチャードの悪行をスカッと見ることができるようになるのだそうです。

 

三男リチャードが王位に着くには、長男のエドワード王とその幼い息子たち、そして次男のクラレンス公ジョージに死んでもらわないとなりません。

リチャードはせむしで足を引き摺り醜く生まれましたが、代わりに弁はめちゃくちゃ立ちます。

まず、エドワード王に、クラレンス公ジョージが反逆を企てていると疑わせ、ジョージはロンドン塔に投獄されます。

ジョージには「お兄ちゃん、これは何かの間違いだよ。きっとエドワード兄ちゃんの妻にのしあがった王妃エリザベスが讒言してるんだ。僕が誤解が解けるよう頑張るし、嫌だけどエリザベスにとりなしを頼んだらなんとかなるかもしれないから、お兄ちゃんは希望を捨てずにいてね」的なことを言ってジョージをだまし、人のいいジョージはこの言葉を信じてリチャードは自分の味方だと思ってしまいます。

 

次に財産狙いで、敵のランカスター家の王太子の妻だった未亡人アンをものにしようとします。

アンが、ヨーク三兄弟に殺害された前王のヘンリー六世の遺体の入った棺を運びながら、義父ヘンリー六世と夫の王太子エドワードの死を嘆き、殺したヨーク家を呪いながら葬儀に向かうところにリチャードが単身現れ、アンを口説き始めます。

当然呪いの言葉を吐き、リチャードを悪党とののしるアンですが、リチャードの巧みな話術で「あなたの美しさが真犯人、あなたを手に入れるため殺人を犯したのだ」と熱烈に口説かれていくうちに何故かリチャードから指輪を受け取ってしまいます。

本で読むと「なんでや!」って思うけど、リチャード役の方のたくみな話術とエナジーで演じるのを見たら、さすがリチャードすごい!ってなるのかな。(まあ一生さんが演じたらなるけどね←イセクラ)

アンに剣を渡してあなたの手によって死を賜りたいと言ったり、アンが唾をはきかけて「この唾が毒であったらいいのに」と言うと「そのようにかわいい口から毒など出てきはせぬ」と言う辺りも、天保にパロられている場面です。

この口説き成功にはリチャードもハイになったみたいで「おいおいこんな気分の時に求婚に応じた女がいるか? すると案外おれの容姿ってイケてるんじゃない? 鏡を買って仕立て屋を雇って、身だしなみをよくしようかな」と浮かれます。(その後またエドワード王を太陽に例え、自分は影法師を眺めるようなことを言いますが)

 

一方、エドワード王は病の床にあり、王妃のエリザベスは不安に駆られています。今、王が亡くなったら王子は幼いから後見にはリチャードがつくだろうと。

王妃一派(王妃エリザベスの前の夫との連れ子や弟)とリチャードや侍従のヘイスティングスは仲が悪いのです。

そこにリチャードがやってきて王妃と言い争いをしていると、リチャードらが殺した前の王、ランカスター家のヘンリー六世の未亡人マーガレットがやってきて、王妃もリチャードも侍従のヘイスティングや王妃の一族も、ランカスター家に仇なしたもの達だから不幸になれと呪いを吐きます。その場に居たバッキンガム公だけはランカスター家の血に染まっていないと呪いから除外しますが、リチャードに気をつけるようにというマーガレットの助言に彼が耳を貸さなかったので、お前もいつか悲しみの中、私が予言者だったとわかるだろうと言います。

 

リチャードは、病気の王より先に次男の兄ジョージに死んでもらわないとならないと、ロンドン塔に刺客を二人差し向けます。

ジョージはリチャードの事を信じていて、金が目当てなら俺を殺さないでリチャードのところに行けば(命を助けた)褒美がもらえると命乞いしますが刺され、葡萄酒樽の中で溺れさせられて殺されます。

 

病床のエドワード王がいがみあってるリチャードや家臣、王妃たちの和解を望むので、みな和解しますが、王はジョージが処刑されてしまったことを知り衝撃を受けます。

 

ジョージの遺児とヨーク三兄弟の母の公爵夫人がジョージの死を嘆いているところに、王妃エリザベスがエドワード王の薨去を知らせ、皆で嘆き悲しむ愁嘆場。

ここで公爵夫人はエドワード王、ジョージ、リチャードの母でありながら、(リチャードが悪党なせいもあるが)エドワードとジョージしか愛していないような描写がされます。

(心理学者が、不具に生まれたため母に疎まれた可能性があるリチャードが、本来なら母との間に他者との関係性を築くことで良心が生まれるところ、他者と関係性を築くことができなかったため平気で悪を行うことができるようになってしまったのでは、と述べている本を見ました)

 

幼少の王太子エドワード(五世)が即位の為にロンドンにやってくる隙に、リチャードは王妃エリザベスの弟や連れ子の王妃一派を投獄、処刑します。

そして王太子エドワードとその弟の2王子をロンドン塔に監禁。

腹心のバッキンガムと謀り、ヘースティングズを味方に引き入れようとしますが、彼は世継ぎはエドワード王子だと譲らないので、リチャードはヘースティングズが自分を呪って腕を萎えさせたと言いがかりをつけて処刑します。ヘースティングズは自分は安全だとたかをくくっていたことを後悔しつつ処刑されました。

 

リチャードは腹心のバッキンガムに、兄エドワード四世は放蕩な男で女性には見境なく手を出し、王子とされている二人も私生児である、さらにエドワード四世自体も母である公爵夫人の不義の子と噂を流すように指示します。(つまり王位の正当性が無い)

そして市民の前で、自分にまわってきた王座を遠慮するように見せかけて、仕方なく王位につくという芝居をうって王位につきました。

 

リチャード三世はロンドン塔の王子二人が生きていると落ちつかないと、殺害をバッキンガムに命じましたが、バッキンガムが幼子殺しに難色を示したため、他の殺し屋を差し向けました。

次に王位を安泰にするため兄エドワード四世の娘を王妃にむかえようと、妻にしていたアンが重病だと噂を流します。(そして殺害)

 

しかし、王になる欲望を果たしてしまったリチャード三世の崩壊はここから始まり、ランカスター家のリッチモンドが王になると予言されていたことを思い出して警戒することで頭がいっぱいになって、腹心のバッキンガムが約束の褒美はもらえるのか尋ねても返事をせず、バッキンガムはリチャード三世を裏切ります。(反乱を起こすが捕まり、マーガレットの呪いを思い出しながら処刑される)

ついにリッチモンドが挙兵し、リチャード三世に殺された者達の亡霊が出現、リッチモンドを励まし、リチャード三世を呪います。

リチャードは悪夢から飛び起き、なにを恐れる、おれがおれに復讐するからか? おれはおれを愛している、とんでもない、おれはおれを憎んでいる、と反問します。

 

リッチモンドが攻めてきて、戦いで馬をやられたリチャード三世は徒歩で戦いましたが「馬をくれ、馬の代わりに我が王国をやる」と言いながら倒されます。

リッチモンドの勝利宣言、ヘンリー七世として即位して終わります。

 

後半かなり駆け足でいろんな名場面はしょっちゃいましたが、5分じゃ無理でした(笑)。

 

一生さんのハムレットも観たいですが、リチャード三世そのものも観てみたいです。