★お気楽日記★

アリとキリギリスでは断然キリギリスです。 うさぎとかめなら、確実にうさぎです。 でも跳ねる趣味はありません。

野田地図(NODA・MAP)「フェイクスピア」シーンごと感想⑥

  野田地図(NODA・MAP)「フェイクスピア」各場面の感想、続きです。

crearose.hatenablog.com

 

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 (千秋楽のポスター写真)

 

御簾の中に入ったアタイ(中身は伝説のイタコ)は楽に、父親の「死者の夢」を追って下山したいのか尋ねます。

生きている人間の下りていく道は未来に向かうが、死者の道は過去に戻る、そしてこの「死者の夢」は覚めた時が終わりでもう二度と父親には会えなくなると。

このまま二度と会えないよりはと、楽とアタイ(in伝説のイタコ)は、気球に乗って恐山の空からmonoを探すことにします。

セットは、上から気球のバルーン部分が下りてきて、鈍い銀色のカゴに見立てた仕切りを立てて囲い、二人が中に立ち、背景に雲が描かれた空が出て、雲が下にスクロールしていくことで、気球が上昇しているように見せます。

 

伝説のイタコは、恐山のイタコたちに「うちの娘が、この恐山の底力を見せてやろうと言ってるんだ。死者を口寄せ、憑りつき、のりうつれ!恐山の頂の死者の夢を見せてやれ!」と叫び、烏は4人、八百屋舞台の上に立ち義太夫を、イタコ達は人形浄瑠璃マクベスの3人の魔女の一節を風船を持って吹いたりして演じ、「わしもひと吹きしてやるよ」のタイミングで気球が上手側に少しずつ移動します。

 

「あ、順風満帆の気球に逆風が吹いた」と楽が言うと、烏たちが「秋、夏、春、冬、秋、夏、春、冬」と季節を逆に叫びながら団扇であおぎます。

「なんか逆戻りしてませんか?」「そりゃそうさ、太古へ戻る風だ」「戻ってる、戻ってる、季節が戻ってる」「でもあんたの死んだ父親、ここらには見つからないねぇ……あれ?」「パパだ、あのシルエット」という会話で、monoが舞台に走りこんできます。今まで半袖にしていたジャケットの袖を伸ばして、肘のところの切れ目から腕を出すスタイル。

(別場面の写真ですが、この袖にしています。初日付近は前半の憑依の場面で女性になった時にもこの袖にしていたのですが、公演期間途中から、ずっと半袖で通し、この気球の追いかけっこの場面のみ、この袖にしています。意図は不明ですが、走り回る時の姿が飛行機っぽく見せたいのかも?)

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(舞台写真は篠山紀信さん撮影の宣材写真転載させていただきました)

 

走り込んできたmonoを追いかけて走り込んでくる、アブラハムと三日坊主。反時計回りに(時間を遡る)追いかけっこをし、上手の柱でmonoはいったん休憩しながら、荒い息でアブラハムと三日坊主を見、下手柱で二人は「お前、なんであいつを追ってるか、覚えてる?」「追いかけすぎて、忘れてしまった」と言います。

 

気球の背景の空に、大きな一つ目が回転しながら下手から上手に向かって移動し、イタコたちが豚の頭を持って、またマクベスの魔女の一節を語り、通り過ぎます。

楽は気球から「何が始まったんだ?」と驚き、三日坊主が「お前何故、あんな化け物に追われている?」とmonoに聞くと「あの巨人の目を潰したからだ」と答えるmono。

アブラハムが「何故そんな真似を」と尋ね、monoは「目を潰した隙に、神様のコトノハを盗んだんだ」と言います。「どんな言葉だ」「それは今どこにあるんだ」と言う二人に「ならば僕を追いかけろ、さすれば分かるさ」とmonoは答えて上手袖に逃げ、「待て!オデュッセウス!」とアブラハムと三日坊主の二人も追いかけて袖に消えます。

 

それを見て「あれ?パパじゃなかった」「誰?オデュッセウスって」と言う楽。

アタイは「遠く太古のお話さ、あれはオデュッセウスも見たという、父と子が再会するために通っていかなければならない通過儀礼、悪夢さ」と言い、楽は「なんでそんな話になるんだ?」と不思議がると、アタイは「フィークション!」と叫びポーズを取ると、ブレヒト幕が走り、アタイ(白石さん)の代わりにシェイクスピア(野田さん)がそのポーズをして気球の中に立っています。

 

オデュッセウスホメロス叙事詩オデュッセイア」の主人公で、知将で英雄の彼がポセイドンの怒りを買って、故郷になかなか帰れず、息子テレマコス(女神アテナに導かれて父を探す)に再会するまでの長い苦難の道のり(冒険譚?)のお話なのですが、このオデュッセウス名前の由来が、母方の祖父が命名を頼まれ、「自分は今まで多くの人間に憎まれてきた(オデュッサメノス)ので、憎まれ者オデュッセウス)がよい」と名付けたというとwikiにあって、日航機事故のあと、CVRの音声が表に出て名誉が回復するまでの数年、人殺しと罵られた機長のイメージと重なって、おおぅ・・・と思いました)

 

シェイクスピアは、お前たち父と子が呼んだ悲劇を、このシェイクスピアが書いたギリシア悲劇というフィクションの世界に親切にも収めてやろうっていうんだと言い、楽がギリシア悲劇を書いたのはシェイクスピアじゃないことを指摘すると、「書いた。ギリシア悲劇源氏物語サザエさんも、この世のフィクションは全部私が書いた」と言い張ります。(観客笑う)

フィクションの世界に収めてどうしたいんだと楽が問うと、シェイクスピアは恐る恐るという感じで気球のカゴの外に出て、縁を伝い歩きしながら「近頃のくしゃみがおかしい。フィクション!のこの言葉の神様が怖れる言の葉はこの世にない……はずだった。だが、ここ最近の、ノン、ノン、ノンフィクション!(くしゃみ風に) あの匣に近づいてからというものの恐怖心をビジュアル化しています(ここ戯曲と台詞変えましたね)」(観客笑う)と言って、気球のカゴを半周して急いで中に戻ります。

 

「あの匣には、そんな言の葉がはいっているのか?」と楽が言うとシェイクスピアは「わからない、だから私の息子がおまえのパパを訴えたあの裁判は示談にしよう。マコトノ葉の入ったあの匣を奪い合うのはもうやめにしよう」と提案、しかし楽はその言葉のリズムに乗って、ラップのように、気球のカゴの縁をドラムのように叩きながら「だったら生憎あの匣は、父が命を賭けて、山を駆けて、捜して捜して、私に渡しに来る算段。だから示談はなれ合い、示談にゃ乗れない。こころ痛んだ、ここらの異端児」と言い、シェイクスピアは「勝手にしろい、そりゃ面白い。兎の尾っぽの尾も白い。せっかくの示談をないがしろい。失礼千万、父親の裁判、むしろこれから、針のムシロ」とラップで返します。

 

その口調に、お前、バカ息子の方か?と楽が気付くと、シェイクスピアはフェイクスピアのかぶっていた野球帽?を取り出してラッパーのようにかぶり、「見たか聞いたかばれたかヨタカ。そうだよ、僕はフェイクスピア。じゃあ示談は不成立、神の裁きで待ってるぜ」とポーズをとり、ブレヒト幕が走ると、フェイクスピアがアタイ(伝説のイタコ)に代わっています。

楽が「この空の上で何が起こっているんだ」とびっくりすると、「何でも起こる、だってこれは死者の夢だから」とアタイが言ってポーズをとり、ブレヒト幕が走ると、同じポーズの星の王子様が現れます。「約束通り僕、現れただろう」「僕は君のパパの弁護人だ」と。

 

楽は、この逆風、ずいぶんと大昔に戻り過ぎてないかなと心配すると、王子様は「うん、太古も太古、人間のはじまりまで」と言い、ブレヒト幕、下手からスローモーションで走っているmonoの姿があります。

(自力でスローモーションするから、体幹が強くないと&ちょっと足がぷるぷるしていた一生さん)

王子様は「君がプロメテウスの従兄?」と呼びかけ「君が神様から初めに盗んだコトバ、何だったか知ってるかい?」と話しかけます。

「見当もつかない」というmonoに、「プロメテウスは「火」を盗んだ。君も「火」を盗んだつもりだった。ところが君は江戸っ子だった」「だから「火」を盗んだつもりが、「死」を盗んでしまった」(観客笑う。江戸っ子は「ひ」と「し」の発音が区別できないので)と解説する王子様。

「僕は神様から「死」という言葉を盗んだのか」とスローモーションで上手方面に走りながら言うmono。

王子様「そう、それで「死」を盗まれた神様はね、不死になった」

楽「代わりに人間が「死ぬ」ようになったのかい」

王子様「そういうこと」

mono「じゃあ、その時、僕が「死」という言葉を盗まなかったら、人間は死なずにすんだのかい?」

王子様「いいや、違う。人間は、確かに目の前で死んでいるのだけれども、それが「死」というものだということに気がつかないだけ」

mono「まるで樹木が死ぬみたいなことか、いつ死んだかわからないって」

王子様「そう、ひまわりが何時何分何秒に死んだとは君、考えないだろう」

楽「そうだね、このひまわりご臨終です。とはいわないね」

mono「人間の死が、枯れたひまわりになる」

楽「ひまわりのような死か」

mono「人は「死」を知らない方が本当に幸せなのだろうか」

王子様「そのことを知るために今、君は、生者の道を逆走している、命の限り」

mono「命の限り?」

王子様「8月12日、午後6時56分28秒(日航機の墜落時間=monoが亡くなった時間)まで逆走している」

その瞬間、スローモーションが解けてmonoは走り、気球の周りをぐるぐる反時計回りに八百屋舞台を駆け抜け、三日坊主とアブラハムが追いかけます。

 

(死を盗んで人間に与えたことにより、「死」という概念が生まれ、人は「死」を意識するようになりました。

「死」という概念が無かったら、最後までその運命に抗って死の間際まで生きようとはしなかったでしょう。

「死」という概念が無ければ、CVRの30分間の死闘も無かったということになります。(また、息子に言葉を残したいという思いも生まれなかったでしょう)

「死」を知らない方が幸せなのかどうか、知らなければ死の恐怖もありませんでしたが、息子に心を遺すことも無かったですね・・・)

 

上手の柱にすがりながらmonoは「早く、僕を追い込んでくれ」「ハーハー」(と荒い息)「もう時間が無いんだ、できる?」と下手のアブラハムと三日坊主に言うと、アブラハム「ききません」mono「山行くぞ」アブラハム「はい」mono「出ない」アブラハム「ふかしましょうか?」mono「ハーハーハーハー」という謎の会話をして、monoは上手袖に走り去ります。

観劇時は突然何を言いだした?という台詞の応酬ですが、これ(「できる?」から「ふかしましょうか」)はCVRの会話です。(どーんといこうやのちょっと前あたりの)

 

走り去ったmonoに、二人はまだmonoを追うか迷いだします。匣を届けて自分たちまでも死んでしまうなんてことになったら、匣のことは忘れてしまった方が良いのではないかと。

そこにオタコ姐さんがトランクを転がしながら登場し、「行くよ。神様の使いだって矜持を捨てるのかい?」と二人を励まして三人でmonoを追って上手袖に消えます。

(オタコ姐さんがトランクを持つ意味は、客室乗務員のイメージかなあと思います。本当はトランクじゃなく、フライトアテンダントの持つコロコロだとわかりやすいけど、わかりやすすぎちゃうから・・・)

 

そこにmonoが走り込み、またモスグリーンのレインコートの男たちが探知機で匣を探し、舞台中央のmonoがいる辺りでジジ…と反応しだします。

「いいぞ、僕を追い込め、神の裁きへ」「ありがたい、あの匣が近い、どこだ、どこに落ちている」とmonoは言い、地面を手で撫でて探します。そして匣を探しあて「あった!」と持ちあげたところで、みなに取り押さえられます。アブラハムが「オトリ捜査だ」と叫び、「ありがとう恩に着る」というmono。断熱シートのようなもので押さえこまれて覆われます。

(初回は布団でしたが、ここでは断熱シートのような銀色のシート。前回よりさらに遺体をくるんでいるかのような感じに)

三日坊主たちは「所持していたぞ、ハッパはこの匣の中に入っている!」「午前3時33分、恐山中腹、第二山小屋クラブで犯人の身柄を確保しました」「苦節永遠プラス36年、遂に取り戻しました、神様、この匣を」「神様のマコトノ葉が入った匣です」と言います。

monoは神の裁きへ連れて行けと訴えます。

 

それを見て星の王子様は「坊や、下りて行くよ!」「星の王子様はいつも砂漠に到着する」(「星の王子様」は砂漠に不時着したサン=テグジュペリと王子様のお話)「僕は君のパパの弁護人。神がぁ裁く、そんなぁ砂漠。そこに下りて行こう」と言います。

 

気球の上の部分が舞台上空に上がって収納され、カゴの部分が裁判台に変わり中央奥に置かれ、神が座る大きな椅子と、周囲を烏と烏女王が囲みます。神の席は空席です。台が3つ運び込まれて、一つはmonoが匣を置いて立ち、もう一つは下手に弁護人席で星の王子様と楽、もう一つは上手に検事席でフェイクスピアが立ちます。

 

烏女王が「被告人mono、亡霊ならば、そのバンクォーの椅子に着席なさい」と言います。

(バンクォーは「マクベス」の登場人物で、魔女の予言でバンクォーの子孫が王位を継承すると言われたため、恐れたマクベスに殺害された人。(息子はかろうじて生き延び、後に予言通り王位をつぐ)晩餐会でバンクォーの亡霊がマクベスの席についていて、マクベスにはその姿が見えていて取り乱します。亡霊からバンクォーを想起したのか、父親は死んだが息子は生き延びたというイメージもあるのか

 

monoは「僕は亡霊ではない。僕は最後まで生きる」と抗います。

そして神様はどこにいるのか尋ねると、烏の女王は「ただいま神様は留守にしております。ご用件がございましたら、ぴーと!」と留守番電話の真似をします。mono「神様は不在なんですか?」アブラハムロシア革命以来、神は不在だ」三日坊主「お前言ってて意味がわからないだろう」(この流れは笑う場面ですが、日によって笑いの量が違ったかな・・・)monoは「神様が不在の神の裁きに意味があるのか」と問います。

烏女王は「ある!やい匣ドロボー!マコトノ葉ドロボー!永遠プラス36年前、神の言葉を奪い、人間の世界に持ち込んだ男……の末裔。おかげで、コトバを盗まれた神は無口になった」と言い返し、monoは「神が無口のままでいいはずがない、山ほど聞きたいことがあるのはこちらだ、答えてくれこのマコトノ葉について」とさらに言い返します。

そこへフェイクスピアが「裁判鳥!」と手を挙げます。(さいばんちょうって、この漢字だったことを戯曲で知りました(笑))

「神様何で何もおっしゃってくれないんです?(甘えた声で)」と苦情が出るが、神を無口にしたのは人間自身だとコトバの神様(=シェイクスピア)が言っている、と。

それに対しmonoは自分はマコトノ葉を盗んでいない、盗もうとしているのはその男の父親だと抗議します。

フェイクスピアは「シェイクスピアが盗作したがってるだと?この中のマコトノ葉を欲しがっているとでもいうのか」と怒りますが、monoも「でなければ何故僕に濡れ衣を着せる、息子のお前を使ってまで」と言い返します。

 

(この辺りは、シェイクスピア創作(フィクション)の達人でもノンフィクションのリアルな言葉には敵わないということでしょうか。そしてシェイクスピアと言っていますが、実際マコトノ葉を盗んで使っているのは野田さん

 

そこに楽がパパに質問があると割って入ります。

「どうして僕たちはこんな夢を見ているの?」「ダブルブッキングしたこの夢は、いつ始まったの?」と。

息子に質問されてちょっと困惑しながら「パパはお前が、地下鉄のホームのベンチに座って「ひまわりの死」について考えていた時、そしていよいよ線路に身を投げようとした時、このマコトノ葉をお前に聞かせようと、大きな木の下で目が覚めた」「死者は目覚めて初めて夢を見る」と答えます。

 

(ひまわりの死について考えるというのは、自殺願望、希死念慮のことを指すのでしょうか。死の瞬間まで抗う人間の死との対比として。そして「死者の書」では死者は呼ばれて目を覚ましていたので――「死者の書」の場合は他の魂を呼んでいたのですが、monoも息子に呼ばれて(思い出されて)目を覚ましたのでしょうか。そして「僕たち」が見ている夢なので、やはり楽も死者の世界にある程度は足を踏み入れているんだろうなと思います。自殺願望があるためか、もしくは実際に死にそこなって生死をさまよっているのかは受け手の想像と思いますが)

 

楽はどんなコトノハを聞かせたかったのかと匣を開けたがりますが、フェイクスピアはそれは危ないハッパだから公の場で聞かせて良いものじゃないと反対します。

そこに星の王子様が弁護に立ち、「mono、君はこのマコトノ葉が一番大切なものだと感じていますね」と尋ね、monoは「はい!」とその弁護に乗るように勢い込んで返事をします。

(monoの注意が王子様の方に向いている隙に、フェイクスピアは匣にイヤホンを差し込み、中の音声を聞いています)

「だったらこれは目に見えないコトバですね」「はい!」「そこで伺います」「はい!」「目に見えないコトバとは何ですか」「声です!」(前のめりに)

そこに匣の声を聞いていたフェイクスピアが「うける~(匣の音声に対し)」と言って邪魔をし、王子様は「あなたに聞いてないから!」とフェイクスピアに怒ります。

monoは「声は、目に見えないコトバです!」と言い、王子様は「そう、だからこの匣を開けても、中には何も入っていません」「何も入っていない以上、盗みではありません!」と必死に弁護しますが、そこに匣の声を聞いていたフェイクスピアが「ゲームじゃん、これゲームじゃん」と言ってけたたましく笑うので、「静かにしてくれないか!」と怒る王子様。

「だってこれゲームだぜ、この匣から聞こえるコトバ。ハイドロプレッシャーとか。スコーク77とか」とバカにするフェイクスピアに、その専門用語に心当たりがあるように、アブラハムと三日坊主が反応します。

「だってがんばれとか、気合を入れろとか言って、ゲームやってる奴を周りで盛り上げてる」というフェイクスピアに、「君の耳にそう聞こえるだけだ」と語気強く王子様は言い返しますが、「聞こえないよ君の声。作中人物には声が無いから」とあしらわれ、ムッとします。

 

(君の耳にそう聞こえるだけとは、同じ言葉(声)でも受け手によって解釈が変わってしまうということで、まさにCVRも解釈がまちまちの部分があると思います。作中人物には声が無いというのは、息をしていないから声も無いのかもしれませんが、どういうことでしょう。作中人物は創作主に好きなようにしゃべらされる?)

 

王子様は楽に「この匣にある声の一群は、君のパパが最後に遺した足音。僕にはそう聞こえる」と必死に訴えますが、そこにフェイクスピアが「この被告人、こんなコトバしゃべりながら何を考えていたと思う?「これはだめかもわからんね」だって、ありえな~い」と言うと、楽も「裁判鳥、僕も聞きたい」と言いだし、monoは「え?」とうろたえます。

「何を考えていたの?どーんと行こうやって何?」と楽が言うと、アブラハムも「ハイドロプレッシャーって何だ!?」三日坊主が「スコーク77って何だ!?」フェイクスピアが「がんばれ、気合を入れろって何!?」楽が再び「どーんと行こうやって?パパ!!」と四方八方からmonoに質問を浴びせ、monoは最初はうろたえて四方八方の質問者の顔を声をかけられる度に困ったように見ていましたが、ここで豹変します。

 

「それがマコトノ葉だろうか!それがマコトノ葉だろうか!それがマコトノ葉だろうか!ここらあたりから吐き出された心からの言葉だろうか!」と自らの胸をわしづかみにしながら、強い語気で問いかけます。

烏女王は「折角盗んだマコトノ葉を、そんな自信のないものにしてしまった、人間という愚かな生き物よ、一言でも、神様に返す言葉があったらここで申してみろ」と言いますが、それに対してmonoは「頭を下げろ!」と叫びます。

裁判所が騒然となり、楽が「パパ、さすがに神様に向かって」と、とりなそうとしますが、monoは「頭を下げろ!かつてとてつもなく大きなものと闘った時に、私はそう言った。その記憶が甦って来た」「まさにその時、抗いがたい運命、神様と闘った……気がする。その時の僕のコトバが、この匣の中に入っていたはずだ」と血を吐くように訴えます。

「だったらそれは神様のコトノハではなくて」「神様と闘った時のコトノハか」「今度は神様と闘ったなどと言い始めた」「やはりプロメテウスの従兄だ」「神様がいないのをいいことに」と非難されながら、monoは裁判台の上に匣を抱えて上がり、仰向けに横たわります。

「やはり悪い奴なのか?あいつは」「探知機が鳴り始めた」という三日坊主とアブラハム

 

(この台の上にあおむけに横たわるmonoが、野田さん、サービスカットですか!!!!っていう感じにイセクラの劣情を誘っているわけですが(笑)、頭というか胸の辺りからもう台からはみだしているので、頭がのけぞる感じになって、汗がぼったぼったと舞台に垂れてるわ、匣を抱える腕の血管や筋は素晴らしいわ、monoが苦しげに気を失いそうな感じで、ピエタのキリストみたいという声もあったのですが、これ、怖い想像をすると、その前に「プロメテウスの従兄」と言われていたので、プロメテウスが毎日肝臓を鷲に食べられる拷問(プロメテウスは不死なので毎日肝臓も復活してしまうから苦しみが永遠に続く)を表わしているともとれます。プロメテウスの拷問シーンを描いた絵画は、こんな感じであおむけになっているプロメテウスに鳥がはらわたつついてるみたいなものが多いし。戯曲にはここのmonoの動きについて何も書いていないのですが、稽古場で考えた振り付け?でしょうか・・・・。いや、生贄的な推しはとてもセクシーなんですけど・・・・誰の発案?まさか一生さん?あなたblank13の時もいいこと思いついた風に、「コウジが服装に無頓着なことを表現するため衣装のTシャツをオーバーサイズにしました」とか言ってたけど、そのせいでゆるゆる首元からチラ見えする鎖骨と胸元が気になっちゃって、こちとら話に集中できなかったんだからね!)

 

そのmonoの匣に向かって、モスグリーンのレインコートを着た捜索者達が探知機(正確には探知機に見せかけた飛行機の機器)を持って近づき、「近いぞ!反応している!」「この辺りなのは間違いない」「くまなく探せ、枯葉の下も」「あったぞ!」とmonoが抱えている匣を発見します。

捜索者に混じった三日坊主とアブラハムが「苦節、永遠プラス36年、遂に取り戻しました、この匣を」「神様の言の葉が入った匣です」と宣言すると、捜索者が「神様のコトノハ?」「何とぼけたこと言ってるんだ」「これはボイスレコーダーだ」「知らずに捜索していたのか?」「墜落したんだよ、大きな飛行機が!」「誰もいない森で」と言います。

日航機事故の話だとここまでに気付いていたとしても、鳥肌が立つ場面。

 

monoは台に横たわり頭が落ちた状態の体勢で「ずしーんとばかりとてつもなく大きな音を立てて大木が倒れてゆく。けれども誰もいない森ではだれ一人その音を聞くものがいない。誰にも聞こえない音、それは音だろうか……私はどうしても、この音を、この声をお前に届けたかった」と言います。(すごい体幹

 

9000文字越えたので、シーンの途中ですが続きます・・・。

 

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