★お気楽日記★

アリとキリギリスでは断然キリギリスです。 うさぎとかめなら、確実にうさぎです。 でも跳ねる趣味はありません。

野田地図(NODA・MAP)「フェイクスピア」初日観劇してきました(5/29マチネも)

 高橋一生さんが野田地図(nodamap)に出演されるということで、2021年5月24日、「フェイクスピア」初日、観劇してきました。(この5/24という数字にも意味があったとは・・・)

(その後、5/29マチネの2階席を追いチケしました)

 

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お芝居を頻繁に観に行くようになったのは、一生さんが主演した去年の「天保十二年のシェイクスピア」からで、その後もミュージカルが多くストレートプレイを観るのは2,3回目くらい、もちろん野田地図を観たことも無い私、ちゃんと理解できるのかとか不安でした。

その他にも仕事終わりで駆けつけるので間に合うかどうかとか、上演時間が2時間5分で休憩なしだからトイレは大丈夫かとか、不安要素はたくさん。

(結果的に間に合ったしトイレも大丈夫でした)

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初日はF列のセンターブロック。(感染対策でA列無くしてB列が最前列)

E列までは傾斜無しでFから傾斜がつくので、今回の手持ちチケットで演者に近く見やすいという意味ではベストの席。

そしてとても近かったです。一生さんの爪がピカピカしてるのとかよく見えました。

 

さて、ストーリーですが、野田地図さんは事前に情報を出さない方針らしく、雑誌やTVインタビューで事前に出た情報は「恐山が舞台で白石さんがイタコをやる」「シェイクスピアの四大悲劇が出てくる」「一生さんの役はみんなが惚れちゃう素敵な役」「前田敦子さんは誰もが知っている役をやる」「野田さんが30年前に出会ったコトバの一群を、不謹慎にも芝居にしたいと思い、最後はそのコトバの引用で終わる。作りかえられない、フェイクではない強いコトバ(ただしシェイクスピアの言葉ではない)」というもの。あとはキービジュアルが、キャストの方が口からピンクの巻紙というか何かを出している、ということだけ。

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事前に予習しないとストーリーについていけない私としては不安で、今までの野田地図さんのレビューを見て、また戦争に結び付くのかな、とか、フェイクニュースとか流行っているしシェイクスピアの悲劇も嘘をついて人を陥れたりするから、そういうお話かな?とか勝手に予想して初日を迎えました。

(あと、ゲネプロを観た方から「泣けるからハンカチ必須」「一生さんはこの芝居で命を削ってるだろう」という情報で・・・え?命削ったらイヤ、また不憫な役なのかしらとかドキドキでした)

 

 

で、ストーリー&感想です。

ネタバレ100%なのでご注意ください。

(今回観に行けなくてお話を知りたいという方を念頭に置いて書いています。

せっかく野田地図さんが情報を出さず、初見で楽しんでほしいとされているようですので、未見の方で観劇予定がある方は、観劇後に)

(・・・なんて言った割にまったくストーリー覚えてなくてめちゃくちゃになりました。戯曲の発売を待つ)

(写真の下からネタバレスタートです)

 

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<キャスト>

mono・・・・・・・・・・・・・・・・高橋一生 
アブラハム・・・・・・・・・・・・・・川平慈英 
三日坊主・・・・・・・・・・・・・・・伊原剛志 
星の王子様/伝説のイタコ/白い烏・・・前田敦子 
オタコ姐さん/烏女王・・・・・・・・・村岡希美 
皆来アタイ・・・・・・・・・・・・・・白石加代子 
シェイクスピア/フェイクスピア・・・・野田秀樹
楽・・・・・・・・・・・・・・・・・・橋爪功 

 

<舞台セット>

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(見る人が見るとネタバレする、夢幻能の形式のセットだそう)

(ワキに乞われてシテが身の上を語り、成仏する)

舞台奥に向かって傾斜がついていて、恐山を表わしている?山のところどころに跳ね板みたいなのがあって、その影から登場人物が出てきたりする。

 

<ストーリー>

(台詞を上手く聞き取れなかったり、かなりうろ覚え&間違いがあると思います。というかクライマックスが衝撃的すぎて、それまでのお話が飛びました)

 

開演前に客席に流れる音楽は、大瀧詠一さんの「夢で逢えたら」、その次がsing,sing,sing。(「夢で逢えたら」の意図は観劇したらわかりますが、なんでsing~だったんだろう?)

 

プロローグはステージに一生さんがオルゴールくらいのサイズの剥げた白い箱を持って立ち、バックにアンサンブルの方々が12人くらい?固まって立ちます。

一生さんはふわふわゆるパーマセンターパーツの髪型で、茶色のハイカラ―のブルゾンに太めのパンツ(ダークブラウン?黒?)、ブルゾンはちょっと不思議な袖で、ひじの裂け目から腕が出る感じでその先の布をひじの部分でとめる?しばる?ことで半そでに見えます。

「大木が倒れる音がするが、誰も聞くことのない音は音なのだろうか」「誰も聞くことのない言葉は言葉なのだろうか」という感じの、詩のようなことを一生さんが箱に話しかけ、アンサンブルの方たちの集団は、大木が倒れるのを表わし、後ろに倒れます。

初日に当然私は一生さんオペラグラスでガン見していましたが、このシーンで一生さんの瞳が潤んでいたので、哀しい場面なのかな??と思いました。

 

そんな幻想的な場面から一転、舞台上明るくなり、白石さんがマイク持って登場。鮮やかなピンクのお洋服で般若面などの模様のお衣装。「白石加代子です」とまんま名乗り、女優になる前は恐山でイタコ見習いをしていたが、とうとうイタコにはなれずに単に恐山に「居た子」になりました、などという嘘の自己紹介をし、物語が始まります。

アンサンブルの女性が一人、イタコの衣装の白いスモッグを裏返しに着て白石さんと両手をつなぎ、もう一人がそれを裾からひっくり返して白石さんにかぶせると(口移しならぬ両手移し・・・伝わるかしら?)白石さんがイタコの衣装(白地に人の顔)を身に付けてイタコ(見習い)に早変わり。

 

恐山でイタコ見習いを50年もしている皆来(みならい)アタイの元に、6時56分28秒なんていう細かい時間にお客さんのアポが入る。(時間多分こんな感じ。うろ覚え)

そしてやってきたのは下手から箱を抱えた若い男(一生さん)と上手から年配の男(橋爪さん)。ダブルブッキングしてしまったのかと焦るアタイ。

若い男は「頭下げろ!」といきなり怒鳴り、アタイは「ダブルブッキング位でそんなに怒らなくてもいいじゃない」としぶしぶ謝って「で誰をおろせばいいの?」と聞くが、若い男は何故自分がここに来たのかもぼんやりしてよくわかっていない様子。

らちが明かないともう一方の年配の男に用向きを聞くと「死んだ娘を呼びだしてほしい」「娘は首を絞められて殺されたのです」と。

ヘビーな内容におじけづきながらアタイが取りかかろうとすると、何故か客の二人に霊が降り、橋爪さんはリア王に、一生さんはコーデリアになり場面の一節を演じる。死んだコーデリア(一生さん)を抱きかかえて嘆くリア王

(一生さんの女役が素敵。イセ子やビアトリス思い出す)

そこに伝説のイタコ(前田さん)の霊が手下を従えて登場。霊がとりついて気を失っている二人を杖(と思ったけど松明なのかな?「火をバッバッってやって」と一生さんが言う台詞あったから)で叩いて正気に戻し、自分はアタイの母で若くしてこの子を産んだから若いんだと主張し、アタイに、飛行機で上空をエンジン音消してホバリングしていたから状況はよく聞こえた、客に先に霊が降りちゃってどうすんのよ、下手!クソ!下手くそ!こっちが見料払うのかい!?と叱咤激励して去っていく。(アンサンブルの方々にリフトされて飛行機を表現して去っていくのとか、おお!って感じの迫力でした。一階前列から観て)

伝説のイタコの前田さんはかなり声を張るお芝居で、喉傷めないか心配。

(前田さんが誰もが知っている役をやると聞いていたので、え?誰?卑弥呼とか?とここで混乱した私。誰もが知る役は後半でした)

 

アタイは気を取り直して続きの降霊をしようとすると、「呼んでほしいのは娘ではなく妻」「自分が首を絞めて殺してしまった、歳の離れた若い妻をおろしてほしい」からのオセローのハンカチを出させようとする場面に。(オセローが橋爪さん、デズデモーナが一生さん)

 そして会話をするうちに年配の男はアタイの高校時代の演劇部の同級生「楽(たの)」だったことが判明し、思い出話に花が咲きます。

「あ、二人で盛り上がっちゃって悪かったわねぇ」と、上手の柱にもたれてぼーっとしていた若い男に気がついてアタイは「あなたは誰を呼んでほしいの?」と。

(訂正:初日、29日ともにやや上手席でこの時の一生さんの表情がよく見えなかったのですが、後日センターから観た時はニコニコしながら二人の会話を見守っていました。楽が喜んでいると彼も嬉しいのですね)

「・・・・息子?」となんとなく今気がついたように言う若い男に、息子を失って悲しくないのか疑問に思う楽と、いやいや亡くして現実味がないのでしょうと同情するアタイ。

その大事そうに抱えている箱も、息子さんの形見なんじゃないのか、開けてみたら?と提案し、若い男が箱を開けると、アンサンブルの人たちが舞台に現れ、黒い紙を偽物の言の葉と撒き散らし、1枚だけ天から降ってきた緑の紙を、本当の言の葉だと若い男は受け取ります。

 

そこに「泥棒!!!」という叫び声。

その声にはじかれたように下手(しもて)に逃げ去る若い男と、つられて楽も上手に逃げる。(のちに山を降りるには生者の道と死者の道があり、同じ側を使わないといけないという話が語られる。下手は死者の道っぽい)

お坊さんの格好をした男(伊原さん)が下手から舞台上に逃げてきて、アタイの姉弟子?のオタコ姐さんに捕まります。

土産物屋から大根ゼリーを盗み食いしたお坊さんは、「警察を呼んでくれ」と言いだし、「警察呼ぶのはこっちだよ」とオタコ姐さんに言われるも、「今晩泊めてほしい」と。(ここで初日は8/13と言った気がしたのですが、2回目に観た時は8/12になっていました。初日は私の記憶違いか耳がおかしかったのかな・・・・)この日から盂蘭盆まで3日間をここですごして人々に幸せをもたらしたい、三日坊主が彼の名前とのこと。

そこにうさんくさい外国人っぽいファッションで神の使いですと名乗るアブラハムが下手からやってきて、変なテレビの取材なの?とかのドタバタの後、水道水で走る車とか怪しげなセールスをして、次に嘘発見器を紹介に来たと小さな機械を取り出します。

何か嘘を言ってみてと三日坊主に言って、三日坊主が私は正直者ですと嘘を言うけど、機械はうんともすんとも言わない。「この機械は何にも反応しないから嘘をついてもばれない(からイタコに良い)」という詐欺みたいなセールストークをし、三日坊主が「俺なら買う!」と調子を合わせます。

 

 

・・・・このあたりから私の記憶があいまいなのですが(笑)

(多分シーンの順番も内容も色々間違っているかと)

 

アタイがオタコ姐さんに「今日は良いことがあったの、高校の時の同級生に会ってね♪」と言って「見料踏み倒されたんだから良くないことだろ!」という会話があったり、真夏に雪が降る奇跡の話があったり、アブラハムと三日坊主は実は二人とも神の使いで鳴らない謎の機械を持っていて、永遠と36年間この機械が反応するのを待っているけど全く反応しない、とか、そこにあの箱を持った若い男がやってきて、彼の名前はmono(単一の、という意味)と判明、アブラハムと三日坊主はmonoも同じく神の使いだと思って声を合わせて「僕たちは神の使い」と言おうとするが、monoだけきょとんとしていて合わせられず。

(ここで「神の使い」と言っていますが「使い=使者=死者」というダブルネーミングと、monoも英語で説明されていましたが、日本語では「モノ」は異界の存在、死者の霊を表わす名前です)

鳴らない探知機について、monoは「鳴らない方が良いのか、良くないのか。これがガス警報的なものなら今まで鳴らないことは良いことだし、民衆の沈黙ならそれは良くないことだ」と疑問を投げかけます。

3人が考え込むと二人の機械がmonoの持つ箱に反応することが判明、二人はmonoを捕まえると、神様から言葉を盗んだ泥棒を捕まえるおとり捜査だったと言って箱を取り上げます。

monoは神から火を盗んだプロメテウスのいとこで、神から言葉を盗んだのだと。

(プロメテウスの弟がパンドラの夫なので、あの箱にパンドラの箱のイメージも重ねているのかなあともちょっぴり思ったり)

この箱を取ったり奪い返したりのドタバタあり。

 

どうやって舞台に戻ってきたか記憶飛んでるのですが、monoと楽が戻ってきて、見料を踏み倒したと文句を言うオタコ姐さんとアタイに、またmonoが「アタマ下げろ!」と怒鳴るので、楽が「泥棒という声に驚いて逃げたとはいえお金払わなかったのはこっちだからその態度はまずい」とたしなめて二人で謝ろうとすると、アタイが頭を下げるので二人はびっくりします。

アタイが頭を下げたのは同級生のよしみで、もうすぐ来るイタコ昇格試験に協力してくれと頼みたかったから。二人をお客にしたら初めて自分にも霊(伝説のイタコ)が降りたから、試験に協力してくれと。

アタイの姉貴分のオタコ姐さんも、最初は二人が見料を踏み倒したと怒りますが、二人の霊媒体質を見込んで試験に協力してくれと頼み(時事ネタで、見料は持続化給付金ちょろまかすなどと)、二人は行きがかり上協力することになります。「霊をおろす滑走路になる(飛行機関連の言葉多し)」と。(時事ネタは他に「香水」歌う場面も)

ここでまたひとつ練習をしておこうかと、楽の娘だか妻だか呼ぼうとすると、今度はマクベスマクベス夫人の霊が降りてきます。一生さんは今度は強気の女性のマクベス夫人で、夫に決意を決めるよう促し、二人で手を洗っても血が落ちない、の場面。

(毎回一生さんが舞台前ギリギリに倒れて気を失う?ので、美しい顔を眺められる、前列サービスタイム)

そうやって勝手にシェイクスピアを使っていると、リスペクトがないぞ=ロイヤリティを払え!とシェイクスピア(野田さん)がじゃーんと登場します。派手な手つなぎダンスシーン。

びびってアンサンブル(烏)の一人を捕まえてその影に隠れようとするmonoと逃げようとする烏の場面が面白い&可愛い。

シェイクスピアは、私を呼んだか?(作品を)読んだか?とmonoに尋ねるけど、monoはどっちもいいえ、と。

そこから「四大悲劇」と「呼んだ悲劇」、タイトルロールはみんな男の名前、悲劇は男に起きるだとか、血液型占いみたいにその四大悲劇を表わしたり(リア王は老いの悲劇でAgeのA、ハムレットは苦悩のBotherのB、マクベスは野心を抱くbe ambitiousでAB、オセローが嫉妬、執着のObsessionのOだったかな、うろ覚えです)そして四大悲劇の残り一つということで、ハムレットが父王の亡霊に遭う場面(に繋がったんだっけな??)。

亡霊っぽく見せるために一生さんが台詞にセルフエコーかけるのがバカ受け。

「まだ私を愛しているなら・・なら・・なら・・・」「はらしてくれ・・・くれ・・くれ・・・」という話し方。(台詞は忘れたので適当に書きました)

ハムレットもやるんだろうな、一生さんはオフィーリアかしら?と思っていたのに、ハムレットが楽でmonoは父の霊で肩透かし。(しかしこれは伏線でした)

 

アタイが楽に、自分がイタコになったのは亡くなった母親に会いたかったからだけど、イタコになり母の霊をおろしたら、自分に降りているから自分は母に会えないと気付いたいう話をしながら、楽もお父さんを3歳の時に亡くして同じ境遇だと仲良くなったんだよねという話をして、楽は死ぬ前に父に会おうと恐山にやってきたことを思い出します。楽の父親はパイロットだったが事故で亡くなり、楽はパイロットに憧れたが母親が許してくれず地下鉄職員になり、定年で駅のベンチにぼーっと座る毎日で、自殺してやろう今度こそ飛び込もうと思ったら、先に隣のベンチに座っていた人に飛びこまれ、アナウンスで「ご迷惑をおかけしております」と流れることに「人の死は迷惑なのか」と絶望、(「そして誰かに背中を押されて」「え?飛び込んだ?」「ここに来て父親に会えと背中を押されて」みたいな会話があり、笑う場面であるかのように作られていて、釣られて笑う観客とそれを見てぎょっとする観客と出る場面)自殺しようと決意を固めて父親に会おうと恐山に来たことを思い出します。

 

場面場面で布団を敷いてみんなが寝ていたり、死者の夢だと語られたり、うっすら夢の中のような、monoも楽も記憶喪失でだんだん思い出していく感じです。

 

セットで面白かったのは幕の使い方で、ブレヒト幕というのかな、舞台をカーテンのように左右に布を引いてその陰で人物などが転換するのが印象的でした。

早変わり大変だろうなあと。

イタコが人をおろす時に、白石さんがブレヒト幕で前田さん(伝説のイタコ)になったり野田さん(シェイクスピア)になったり。幕の移動の間にみんなが布団敷いて寝ていたり。

あとアンサンブルの方の動きが綺麗。身体能力高い人の集まり。人形浄瑠璃みたいな場面もあり。(「天保十二年のシェイクスピア」ちょっと思い出しました)

 

monoは自分が大切に抱えていた箱は息子に絶対に渡さなくちゃいけない!と何度も楽に渡そうとしては奪われたりし、(橋爪さんの3歳の子供役のお芝居がかわいいです。monoの子供になってみたり、素に戻って、この歳になってそんな若い父親の背中を見て育つものかって言ってmonoに「反抗期か?」って言われたり、初めての親子喧嘩だってなったり。monoパパがすごく優しい感じできゅんです)前田さんは星の王子様の格好で出てきて作中人物だから息はしていないとか、大切なものは目に見えないとか、大切なものは目に見えないと目に見える文字で書いてあるとか、自分はmonoが神様から言葉を盗んだ裁判の時に弁護人に立つとか、メタファーの説明で星の王子じゃなくて点をつけたら星の玉子で、という話をしたり(ここ意味わからなかった)、野田さんはシェイクスピアの格好でキャップをかぶりラップを歌いながら「息子のフェイクスピアだ、タイトルロール!」って言ってみたり。

 フェイクスピアは、アブラハムと三日坊主の二人が、神様から盗まれた言葉を取り戻したから神様に届けなきゃ、大手柄だと喜んでいるのに、その箱は神様=シェイクスピアの息子である自分が相続人だ、使者が手紙を届けると殺されることもある、(ハムレットの)ローゼンクランツとギルデンスターンのように「ローゼンクランツとギルデンスターン・・・アブラハムとみっかぼーず」と言って、「響きが似てる!」と用心しだす二人。(ちっとも似ていないので笑いが起きる)

箱の中のまことのコトバを聞いちゃおうとするフェイクスピアと止めようとする二人。ちょっと開けて聞くと「ドーンと行こうや」とか「もうだめかもしらんね」のmonoの声。(使われていた台詞がうろ覚えだけど多分このフレーズだったような)

(この辺りのフレーズで、何の話に繋がるか、わかる人にはわかりだす)

 

箱をめぐるドタバタでは、前田さんは白い烏にもなって、箱を奪ったり咥えて飛んでいたのにしゃべってしまって落したり。

(この白い烏こそ烏というか白い鳥=鶴=JAL機のメタファーじゃないかと思いました。飛び方がおかしいとか、白い烏から山中に落ちた箱を探してみんなで探知機使って反応するシーンあり)

 

フェイクの言葉と本当の言葉(まことの葉)という対比とか、大切なものは目に見えない(=声)とか、イタコは声を頼りに存在を意識するとか、シェイクスピアだかフェイクスピアはノンフィクションは嫌いだとか、主題に関することが色々あったように思うけど、私は観劇初心者で台詞聞くのが下手で、特に野田さんの台詞をあまり聞けなくて集中力も欠いて、このあたり、一回観ただけでは理解できず。

言葉を神から盗んだプロメテウスの従兄は江戸っ子だったので「火(ひ)」ではなく間違えて「死(し)」を盗んでしまったから、人は死ぬようになった。死を人間が持たなければ、人間は「死」ではなく死ぬ状態はヒマワリが枯れるようになるだけだったとかの話もあり、多分いろいろ深い意味があるのでしょう。

 

逃げる姿を表現する一生さんがスローモーションで動く仕草をしていて面白かったです。

 

年に1度のイタコの昇格試験の日、アタイに協力する約束をしていたmonoは「試験までには帰るから」と箱を取り戻すため、アブラハムと三日坊主に追われたら自分は箱の場所にたどり着くと山を逆に上手側から降り(楽に「それまでには戻るって、駅前の焼き鳥屋に行くんじゃないんだから」と言われながら)結局間に合わず、楽だけが試験に立ち会います。

 

試験官が3人と、伝説のイタコが立ちあい、アタイの降霊試験が行われますが(舞台上もかなり暗闇になります)楽が父親の思い出(パイロットで、事故の時「ドーンと行こうや」と言ったから人殺しと言われるようになったとか)を語り、父親の霊に出てきてくれるよう言いますが、monoはパイロット姿(あのブルゾンを脱ぐと下は白シャツ紺ネクタイ)で暗闇をうろつくだけで言葉は発せず、死者の声が聞こえないとイタコはダメなので、アタイは50回目の落第となります。

 

ここまでにmonoが唐突に「アタマ下げろ!」「アタマ上げろ!」と叫んだり、8/12という日付が出たり、monoという名前も超自然的な霊魂(死霊)のこと(もののけとか、物語は霊が語る話が語源)だし、そこに死んだパイロットの父親と「ドーンと行こうや」ときたら、もうあの事故が想起されます。

ジェットコースターの先頭に乗ってもうすぐ急降下がくるというのが見えてドキドキしる気分です。

 

 

アタイは楽のために父親を探しに行こうと、伝説のイタコである母にお願いだから自分に降りてと頼み、母親を自分に降ろして楽と共に気球で時間を遡り、monoを探しだします。(ここでギリシア神話オデュッセウスホメロスの「オデュッセイア」も父と息子が出会う苦難の旅の比喩として引用されます)

そしてmonoとフェイクスピアとで箱の所有権をめぐって神の前で裁判となりますが、神は言葉を失ったので不在です。星の王子さまは懸命にmonoを弁護します。

箱の中身をむりやりイヤホンつけてフェイクスピアは聞き、「これゲームの話だよ。がんばれとかハイドロプレッシャーとか言ってるもん」と言いますが、これは息子に渡すんだ!と抱えて証言台の上に横たわるmono、横たわりながらまたプロローグの詩のような台詞を言います。腹筋要りそう。アンサンブルの人たちもイヤホンで箱の中の声を聞きます。

 

その箱をmonoは息子の楽に渡し、楽は下手前方に座り、箱を開いて言葉を聞きます。

 

舞台中央はアンサンブルの方たちがキャスター付きの椅子を搬入、飛行機の乗客になり、アブラハムと三日坊主が副操縦士航空機関士、オタコ姐さんはキャビンアテンダントに、monoは機長になります。

そしてあのヴォイスレコーダーを再現します。

このシーンがもう圧巻・・・・。

初日は前方席で、機長たちに目が釘付けでしたが、土曜に二階席の追いチケをして、ここのフォーメーションをじっくり見ることが出来ました。

キャスター付き椅子とみんなが横にして持つ手すりの棒がぐらんぐらん振り回される動きで機内の緊迫感を表わし、揺れるごとに椅子や棒が後方列から放り出されて、乗客役のアンサンブルの方たちがどんどん前にしがみついていく、最終的には機長たち3人が乗客を背負うようになる感じ、そしてヴォイスレコーダーそのままを再現していて音声が途切れるところは台詞も途切れ、最後は一生さんが「pull up, pull up, 衝撃音、・・・衝撃音」とヴォイスレコーダーの録音を読み上げる形で終わります。

 

すごいシーンでした。日航機事故のことを知っていた人たちはみんな固まってた(か、号泣してた)と思う。初日。

 

そして乗客や乗員は恐山のセットを登っていき、最後にmonoもこちら(というか楽の方)を向いて後ろ向きに一歩一歩上がっていき、そこに楽のモノローグが入ります。

楽が「頭を上げろ!・・・生きるよ」というところでのmonoの安堵した微笑みは必見。まあ一生さんをずっとオペラグラスで見ている私が見落とすはずが無い。逆に橋爪さん一切見てない。すみません・・・・。

 

アタイが舞台上に登場し、「楽、死んで、たの、生きて行こう」と言って、オープニングとは逆にイタコの衣装をアンサンブルの方に着せて脱いでピンクの服に戻り、終演。カテコ。

 

カテコは4回で、特にトークはありませんでした。(ご時世?)

 

 

 

 

 

<感想>

とにかくクライマックスのヴォイスレコーダーのシーンが圧巻。

圧巻すぎてそれ以前のお話が頭から飛びます。

それと最後にmonoが成仏する時に、楽が「生きるよ」というのを聞いて、安堵して微笑むのが素晴らしい表情で、初日の「フェイクスピア」のイメージは生きるために神と戦った男の言った「頭を上げろ=生きろ!」という励ましメッセージという印象でした。

色々と言葉遊びをしたりフェイクは書いたもん勝ち、言ったもん勝ち、とか本当の言の葉とか言っていた割に、そこに持っていかれてしまう。

パンフレットで野田さんが、高齢の知人が自殺したのがショックだったという話があったので、主題のひとつではあったと思う。

それと、楽とアタイの年齢設定がよくわからなくて、36年前の事故の時3歳だと、今、楽は39歳のはずだけど、50回昇格試験に落ちたアタイと同級生。

アタイは68歳くらいになるから、定年過ぎて自殺を考えた楽もそれくらいの年齢で通るんだけど、計算すると39歳になっちゃうんですよね。

これはその高齢で自殺された方への思いと、今のコロナ騒ぎで自殺してしまう現役世代への思いと、両方表わすための年齢のブレなのかしら?

 

そして、2回目にやや落ちついて(引いて)全体を見ると、野田さんのお話はビュッフェみたいに受け取り手(観客)が好きな部分から好きな感想を持てるものだな、「生きろ」にしても、ノンフィクションの強さにしても、それをフェイクに落し込む罪深さにしても、と思いました。

野田さん自身も「不謹慎」と書いてらっしゃいましたが、今回リアルの言葉を丸々転用することで、フェイクの恐ろしさに改めて気付かされました。

というのも、私はこの日航機墜落事件のヴォイスレコーダーが結構記憶に残っている気になっていて、「アタマ下げろ」「アタマ上げろ」の緊迫した雰囲気の怖さと、機長たちは市街地に落ちないように必死に操縦していたという印象だったのですが、当時の記憶がもっと残っている方達の話では、墜落事故の後、機長の遺族は人殺しというバッシングにさらされていて、15年経ってヴォイスレコーダーが公開されたことで機長の名誉は挽回されたとのこと。そして逆にこれを美談と扱うことで、関連会社の責任の所在がうやむやになったのかも、という話でした。(沈まぬ太陽

つまり私はまんまと報道されたイメージに乗せられていた、とも言えます。

さらにバッシングされたのも、機長の「ドーンと行こうや」の発言が変に取り上げられたかららしく、出どころがノンフィクションでも、その言葉を解体してフェイクにしてしまえる、素敵な物語としてフェイクに使うならまだしも、フェイクニュース的な人を悪い方向に扇動することにも使えるという怖さ、それをわかった上でお芝居というフェイクに取り入れた野田さんが「不謹慎」というのもわかる気がしました。(関係者がまだご存命の傷の癒えていない事故という不謹慎さだけではなく)

(プロローグでmonoが持つ箱からアンサンブルの人が取り出す振り付けで、そこに一生さんの声が音響で出ていたので、ヴォイスレコーダーの言葉を切り取ってバッシングされたことにも通じるのかなと)

今で言えばコロナでの体験談がそれ自体はノンフィクションでも、マスコミに色々切り取られて勝手なイメージ戦略に使われている。

 

それと、このお話は年齢案件で、日航機墜落事故がぴんとくる世代と、全く知らない世代があったと思いますが、ふと、自分が今まで戦争ものを見て心が動かされたりしていたけど、それは戦争を経験した世代と同じものを感じていたのだろうか?という怖さも感じました。

今回の「フェイクスピア」も事故を知らない世代にとっては、全てがフィクションで、でもそれはそれで感動も出来てしまうけれど・・・・。

 

それと、演者さんにとって、ノンフィクションを再現するのと、フィクションのお話を演じるのと、何か心構えとか違うのかしら?

 

あとはもう一生さんがとにかく素敵。

こんなに素敵でかっこよくて子煩悩でスパダリでさらに機長の旦那さまが事故死したら、子供がいなかったら後追いする、もしくは人殺しと言ったやつの顔面パンチして馬乗りになって髪の毛むしってやる、というのがアホのイセクラの感想です。monoさんが生きろというから後者で行きたいと思います。

あと一生さんのパイロット姿❤

初日、あのクライマックスに圧倒されながらも、一生さんの白い半そでシャツの袖に茶色のブルゾンの糸くずがついていたのも見逃さなかった。取ってあげたかった(煩悩)。

あとネクタイシャツ姿の上にハイネックブルゾンで布団もかぶったりするから、一生さんが汗だくなのもファンにはご褒美(変態です)。

一生さんが倒れて気を失う場面が多いのもご褒美。

そして一生さんへの形容詞のほとんどは「可愛い」「美人」「エロい」なのですが、今回のクライマックスで「かっこいい」ってなりました。きゅん。(いや、雄みは常に感じているのですが。かわいい(美人)なのに血管とか筋が雄み、とか)

 

あと何回か見て、戯曲も発売されたら読んで、あらたな感想が生まれたらまた追記なり投稿します!

 

(続編UPしました)

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