★お気楽日記★

アリとキリギリスでは断然キリギリスです。 うさぎとかめなら、確実にうさぎです。 でも跳ねる趣味はありません。

THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY - リミット・オブ・スリーピング ビューティ 観てきました<ネタバレ有>

木曜日に観てきた映画は、高橋一生さんが出演されている
THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY でした。(略してリミスリ)
東京ではなんと新宿武蔵野館1館のみの上映!

ほとんど映画を観ない私ですが、
予告編の一生さん演じるカイトさんの
せつないセリフ回しと儚い感じに惹かれて
ついつい前売りを買いまして。

前売り買ったはいいけど、
東京で1館(しかも100席ちょっとの)しか上映しないって、
行ってみたら満席で入れなかったらどうしよう!と心配になり
平日の昼間に早めに行って座席指定してきました!
(14:20の回を12時半くらいに窓口に行って座席指定。
この時点ではわりと空いてました)
狭い劇場だったので、どの席でも大丈夫だと思いました。

そして想像と違い、客層が妙齢女性ばかりではなく、
定年後のご夫婦やおじいさまが私の席の周りは多かったです。

 

 

さて、観てきた感想を。

注意:ネタバレします!

すでに映画を楽しまれた方(と、ネタバレしても良いという方)のみお読みください。
ブログで感想書かれている方もネタバレしないように書かれている方が多いのに
申し訳ございません。

 

sleepingbeauty-movie.com


<あらすじ>
主人公・オリアアキは、29歳の売れない女優。
女優を夢見て上京し、ふと立ち寄ったバーでサーカス団を営むカイトに出会う。
それから10年、毎日小さなサーカス団でマジシャンの助手をするアキ。
30歳を目前にしたアキには仕事への熱も生きる目標もない。
ルーチンワークのように繰り返されるのは、催眠術にかかるという演技。
体を浮かされ、剣を刺され、催眠状態を演じているうちに、やがてアキの精神は徐々に摩耗し、
いつしか現実と妄想の境界が破たんを迎えようとしていた。
何故生きるのか? 何を夢見たのか? 何を目指すのか? 
唯一アキの中で美しい思い出として残るのは恋人・カイトとの時間・・・。
自分が生きてきた人生の軌跡、アキが生きる現実と、叶えられなかった様々な妄想が入り乱れる。
そして2つの世界の境界が壊れようとしたとき、アキの人生再生がはじまる・・・?!

 


ざっくりした感想としては、主演のアキ役の桜井さんが魅力的。
19歳と29歳のアキを演じるのですが、19歳もちゃんと可愛いし
表情が印象的です。
一生さんはせつない声(せりふ回し)と儚い佇まいが素晴らしいカイト。
前髪で目をあまり見せないことでつかみどころが無い感じを表現。
予告2の中にもあった「アキちゃん、俺なんか明日死んじゃうかもしれないよ」の
死んじゃうかもの「かも」がうわずるところとか心をぎゅっと掴まれます。
そして観終わった後はずーっと主題歌のHummingbirdが脳内再生。

 

このストーリーがどこまで心に刺さるかどうかは
観る方がアキ的な体験というか挫折とかを経験しているかに関わるかもしれないです。
私は子供の時から夢も持たなかったし
愛する人との突然の別れもなかったから
むしろ「このシーンは現実か妄想か」というような細部に目が行きがちになっちゃったかも。

 

 

 

 

ということで、いざネタバレ的細部の感想を。

 

観る前に、二宮監督からの5つのヒントというものがあったので
それをチェックしていました


①あなたが見ているアキの髪の色は、何色?
 その色が彼女は「今」、どこにいるのかを教えてくれるかもしれません。

②映画が始まってすぐの屋上のシーンでの会話を聞き逃さないでください。
 この映画をつかさどる重要な秘密に触れている部分があります。

③「ハムレット」の有名な台詞「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」。
 この映画におけるオフィーリアとは?

④「夢が叶うことを拠り所にしてきても、叶った後は持続させなくてはいけない。
 でも、それって夢がないよね」

⑤あなたにとって当たり前の存在が、他の人にとってはそうでないこともある。
 アキにとってそれは、誰と誰と…。

 

まず②については、スポットライト理論(過去・現在・未来が同時に存在し、
スポットライトの照らす現在がその空間を移動していくという理論)のことを話していて
だからアキが現在だったり過去だったり妄想だったりを行き来する映画になっています。

 

そして①について。
アキ役の桜井さんも、場面ごとの気持ちの切り替えに
「その時のカツラを被ることが演じる手助けになった」というようなことをおっしゃっていて
じゃあ、その場面ごとに髪の色が違うカツラなのかなと思って見たのですが、
髪型はシーンによっていくつかパターンがありましたが
髪の色となると、29歳のアキの赤の入ったカラーリング(光が当たると赤く見える)と
その他の場面の黒髪の2種類に私には思えました。

 

髪型(髪色)をまとめると

19歳のアキ、上京してカイトに会う?カイトと愛の日々を送っている時は普通のボブの黒髪
29歳のアキはセミロングボブ(赤いカラーリング)
女優で成功したアキは黒の(セミ)ロング巻き毛
精神病院に入れられた時は黒のショート。


この「髪型」を追っていけば、場面の違いが混乱することは一見無いのですが
(ただし髪型違いで同じ場面を撮っているようなところもあった気がします)
「髪色」がアキがどこにいるのかを教えてくれる、となると
私が思ったのは
現実のアキ=赤毛
妄想のアキ=黒髪
なのかな、と。


女優で成功したというのは、アキの妄想だから黒髪、
その後精神病院に入れられたのも妄想だから黒髪ショート、
(精神病院の場面、おそらくわざと昭和30年のアニメの設定のような
ロボトミーっぽかったり素人発想の感じの展開になっている気がしたので
アキの妄想なのだろうな、と)
カイトの遺言どおり女優にならなくてはとオフィーリアのオーディションを受けたのは現実(赤毛
枕営業させられそうになったのは現実(赤毛
という感じに受け取りました。
見逃したのですが、アキが女優として成功していて、
暴力団との関係をすっぱ抜かれた時の写真のアキの髪型って、
黒巻き毛でしたっけ・・・・?
(妄想では暴力団との癒着、現実では枕営業?)

ただし、それぞれのシーンでリンクするところが髪型が錯綜してたり
さすがに1回観ただけでは記憶力&動体視力的にあやふやで
全く間違った観方かもしれません。
(ところどころ辻褄が合わない気もするし)

 

で。

この理論で行くと。

カイトとアキが出会った時も黒髪なので
カイトもアキの妄想の中の人ということになっちゃうんですよねー。


映画を観ている時はすごくシンプルに
「愛するカイトが突然いなくなってその喪失感から妄想に逃避するようになった。
カイトが残した「ちゃんと女優になってね」を叶えなきゃと
オーディション受けるも落選→妄想では合格、女優として成功。
成功したけどこの後どうしたらいいのかわからなくなり(監督の言葉④の部分)
実は女優の地位は暴力団とつながって手に入れたもので
それがバレて失脚したという風に妄想(オフィーリア役は正当な合格者に移行)、
失脚して精神的におかしくなり精神病院に閉じ込められたのも妄想。
ちなみに現実ではオーディションに落ちた後、枕営業させられそうになりオーロラに逃げてくる」
という流れかなと思ったのですが、
そもそもカイト自体が現実の人間ではないかもしれません。


と、思うくらい現実感の無いカイト。
すでに精神はもう生きていない、この世のものでは無いような。
名前がカイト(凧)というのも地に足のついていない浮遊感。
故郷から東京に逃げてきたアキの、妄想の中での癒しの存在だったのかもしれません。
(でもそうすると、何故カイトが19歳の時に失われなくてはならなかったのかが
ちょっとわからないです。
アキが無意識に、このままカイトがいると自分は女優の夢を目指さなくなると気が付き、
消したのか?
その割にはその後10年間、女優に向かって動きなし&オフィーリア役のオーディションに行っても
マリアに比べてまったく準備をしていないし)


カイトさんはとにかく100%受身の人です。
アキを拾ったのもバーのマスターに
「あの子、行くあて無いんだろうから部屋に置いてあげなよ」と言われたからで
カイトとアキの関係が始まったのも、アキからカイトにキスしたから(笑)。
サーカス団のちょっと大柄の年増設定(失礼・・・)の女性がアキに嫉妬しているのですが
彼女は多分、以前カイトといい関係だったのではないかと。
望まれたら相手の望みをなんでも叶えちゃいそうなカイトさん。


それは恐らく自分の生を諦めるというか投げだしてしまっているからで
だから他人にとても優しいのでしょうね。
なんとなく、仏教説話の倒れている人の食糧になるために
火に飛びこんだウサギを思い出しました。
(そのウサギは月に昇ったわけで、ランタンに照らされたカイトのイメージや、
カイトの高橋一生さんが好演した政次が月に例えられたことまでも連想してしまいます)

 


そして、カイトとアキといえば、予告から話題になったラブシーンですが
カットの切替が早いためしっかりとは見えないのですが(笑)、
とても自然というかリアルなラブシーンに思えました。
映画などでラブシーンを話題にしたものは、綺麗に言えば官能的というか、
女優さんの裸をよく見えるように抱いてみたりするテクニックがあるようですが
カイトさんのはとてもナチュラルだったように思います。
(それがゆえに、見てはいけないものを見ちゃった感があります(笑))

あと、このシーンでアキの髪型が二転三転していたように思うのですが
私の見間違いでしょうか?
(19歳のアキと29歳のアキと、成功した女優のアキが出たような)

 


さて、監督の言葉③について。

アキが「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」と言い、
さらにアキの家出の理由は、母親が新しい男(旦那さん?)を作ったことにあることから
アキ=ハムレット、とも取れますが
オフィーリア症候群の症状もまたアキに当てはまるようなので
オフィーリアもまた、アキなのかもしれません。
あのままアキが何も行動を起こさなかったらオフィーリアになる(夢うつつのまま死ぬ)ところだった?

 

監督の言葉⑤
「あなたにとって当たり前の存在が、他の人にとってはそうでないこともある。
 アキにとってそれは、誰と誰と…」

誰と誰と、とあるので2名以上挙げよということかと思いますが、
シンプルに考えれば、カイトとブッチでしょうか。
そもそもアキと深い関係にある登場人物がこの2名だけに思えます。
先ほど述べた「カイトも妄想」と併せて、この2人はアキだけに見える人なのかもしれません。
銃撃戦でブッチが去り(去ったのかな?)
ラスト、カイトとオーロラと決別できたアキちゃんはすごいなと思います。
私だったらたぶん、カイトと離れられない気がします。

 

と、監督の言葉を考察してみましたが
1度観ただけですので、大間違い、勘違いしている可能性は多々あります。

 

 

あと、どうでも良い感想。

29歳アキちゃんが、カイトが残してくれたCDかけながらお酒飲んで踊る場面、
なんでブラはつけているのにノーパンなの!?と疑問が渦巻き
そこから数分、集中力を欠きました(笑)。
上下ともつけるか、全裸か、パンいち(笑)なら自然に見られたのですが。
自分だったら、パンツ脱いでるのにブラはつけるという選択肢が無い・・・。
というか、ブラはくつろぐ場合はとっとと外したい(笑)。

また、アキとカイトが出会った時、許可も得ずカイトがアキの写真を撮影しましたが
あれ相手がカイトさんじゃなかったら、女の子がキレて警察沙汰になりそうです(笑)。


DVDが出たら、細部を確認したくなる映画でした。
(きっとそんなことは考えず、素直に観るのが正しいとは思いますが)